におい

今週のお題「冬の楽しみ」


鼻先に感じる冷気と独特のにおい。ああ、冬が来たな、と。
季節の変化はにおいで分かるという人が多数いると思うのだが、私もそうである。


1年前くらいから、この「におい」とは一体何のにおいであろうと考えるようになった(子供の頃は「季節のにおいが分かるのである」などと威張っていたが、私にそんな能力は無い)。
おそらく、季節そのものではなく「風物詩」のにおいなのではないかと思う。よくよく自分を分析すると、春は草木や花、陽射し。夏は雨や乾いたコンクリート、洗濯物の洗剤。秋は枯れ葉、枯れ草、煙、芋や栗などのにおいを、その季節のにおいとして認識しているようであった。そして視覚や聴覚、気温など、やはり季節の認識にはにおい以外のものも大きい。それら五感が作用しあって、自分の中で嗅覚に集約されていたようである。


えせ研究結果はこれくらいにして、冬のにおいの正体は主に石油ストーブであった。外へ出たときにふっと香る、石油ストーブのにおい。ただの灯油ではなく、ストーブを通したにおい。これで「冬が来た!」と思う。冬も深まり、みかんや雪のにおいもしてきたが、未だ圧倒的なのだ、石油ストーブが。
以前住んでいた団地のアパートでは、小さな石油ストーブとファンヒーターで暖をとっていた。ストーブの上でスルメや餅、干し芋、栗…様々なものを焼いては食べた。寒かったが、楽しかった。
今の家は一軒家であたたかく、エアコンもあるが、構造上ストーブが焚けない。それが少し、味気ない。寒い部屋のストーブの香りが懐かしい。


そういう思い出も、私の嗅覚を刺激する。きっと明日も、嫌々寒い外へ出る。自転車をこぐ。冷気を吸う。石油ストーブのにおいをかぐ。

うん、冬だ。


それが私の、冬の楽しみ。