さようなら、わが子供時代

珍しく、真夜中に起きた。足にふわふわしたものが当たるのだ。
毛布がむき出しになっている。
もしかして、マフちゃんが…

飛び起きて確認すると、毛布カバーは真っ二つに裂けていた。
長年、「マフちゃん」の愛称で親しんできたガーゼの毛布カバー。マフちゃんが破れてしまった。布が薄くなってきているのは気付いていたが、まさかこんなに一気に破れてしまうなんて。


この前は、5歳頃から大切に使ってきた小さな茶碗が割れてしまった。私はずいぶんショックを受けて落ち込んだのだけれど、他人からは「そんなことくらいで」といわれ笑われるレベルの話だ。

人間には無関心で冷たいが、それ以外の物には人一倍執着するという自分の性格を、徐々に自覚してきてはいる。これは一種の病気なんじゃないかしらとも思う。やはり、いつまでもそんなことではだめなのかもしれない。
私の子供のころからの友人たち、私のライナスの毛布が次々と消えていく。彼らが「もうあなたは大人なんだから、独り立ちしなさい」と言っているようにも思える。長かった子供時代の終焉、もう家を離れる時なのである、という暗示のような気もする。


まだ悲しみは癒えないが、ひとまず子供時代と優しかった友人たちに、感謝と別れを告げよう。前を向くと、これから考えるべきことが、たくさんある。