そんなにもあなたはレモンを待つてゐた
かなしく白くあかるい死の床で
高村光太郎「レモン哀歌」(『智恵子抄』)より
ああとし子
死ぬといふいまごろになつて
わたくしをいつしやうあかるくするために
こんなさつぱりした雪のひとわんを
おまへはわたくしにたのんだのだ
宮沢賢治「永訣の朝」(『春と修羅』)より
なんという眩しさだろう。今、死のうとしている。そんな時。
彼女はレモンを、彼女は雪のひとわんを待っている。
なんという輝き。
なぜだろう。死の淵にいる彼女たちから、感じられるのは瞳の明るさ。
生の輝き。命の眩しさ。
彼らは、最愛の人が死ぬときを、こんなにも悲しく美しく描いた。
愛する人は、最期まで美しい。