夜の明かり

昨日のことだ。帰り道、南の空に明るい光が見えた。奇妙な形の雲が光っている。雲が暗くなったり、明るくなったり。疲労と眠気で勝手に閉じてくる目蓋をこすりながら、その雲を観察する。
電話口で恋人が「それは月の光が障害物に遮られて、そう見えるんだよ」と言う。障害物の隙間から漏れた月光が薄い雲ごしに見えたのだ。
恋人の心地良い声が遠くなり、私の目蓋が完全に閉じる。幸福な眠り。


今日。帰り道、南の空に月が見える。半熟卵の黄身の色をした、大きな月である。これが昨日の光の正体だ。夜10時にふさわしくない奇妙な色形の月。
さっき南の窓の外を見たら、深夜にふさわしい小さくて白い月になっていた。


忙しく疲労がたまる生活を送ると、却って自然のものに敏感になるようだ。猫が素敵だ。ツバメがかわいい。月が眩しい。星が光る。花が咲く。草が伸びる。