半創作むかしばなし「ももたろ」

 昔々、と、ずいぶんな昔からいわれているので、そりゃあ昔のことなのでしょう。あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行くというのが晴天の日の日課でした。では雨の日はというと、1日中家でじっとしているのです。

 さて、ある晴れた日におばあさんが川で洗濯をしていると、上流から何かが流れて来たようです。

 どんぶらこ どんぶらこ

 どんぶらこなんていう音ですから、たいそう大きなものに違いありません。「なんじゃろ」と、おばあさんは小さな目を凝らします。

 どんぶらこ どんぶらこ

 それはだんだんに近付いて来て……なんと、大きな大きな桃ではありませんか。
 「ありゃりゃ、これは大っきな桃だわい。よっしゃ、いっちょ本気出すかね」
そんなことを早口で呟いたかと思うとおばあさん、そのまま川へざぶざぶと入って行って。

 「とりゃあぁぁ!」がし!っと桃をナイスキャッチ!さすが、年齢を重ねても少しも衰えないキャッチ力、川を熟知したベテランの技です。ところが、川の流れは速かった。大きな桃にしがみついたまま、おばあさんはどんどん流されてしまいます。どんどんどんどん流されて…………

つづく