随筆『女ひと』室生犀星著

随筆 女ひと (岩波文庫)

随筆 女ひと (岩波文庫)

そう、女というものはそういうものである。そして男というものはそういうものであろう。

これは著者の晩年期の作品だが、なるほど、年を重ねれば、男の人も女の人のことが、よく見えてくるのか。それとも著者の感性が抜きん出て素晴らしいのか。おそらくどちらもである。

私は若いので、女というものも男というものもよく分からない。恋愛感情に翻弄され、泣き暮らすばかりだ。しかしそれはそれで良いのではないだろうか。若いけれど「なんとなく」分かることもある。おそらく一生「なんとなく」の積み重ねなのだ。達観など、できないほうが楽しい。

男は女に翻弄され、女は男に翻弄され。一生翻弄されるのも素敵っちゃ素敵だ。恋愛は、翻弄ではないかと思うこともある。そもそも人と人の関わりが、翻弄ではないかとも思う。

この随筆を読むうちに、私の未熟な心にもストンと落ち着く何かが現れた。


人は年を重ねると繊細さを失ってゆくのだろうか。そういう面もあるかもしれないが、人間関係に関しては多分逆である。経験が人を繊細にしていく気がする。大人になってぶつかり合いが減るのはずるくなったからではなく、繊細になったからだと、そんな気がする。

私は粗雑だ。私の恋人も、友人も、粗雑だ。粗雑ゆえに上手くいかないことが多い。でも、粗雑で良いのだ。これから粗雑の私たちはたくさんの経験をして、繊細になっていくだろう。

そんなことを考えた。これは今現在の考えなので、明日には変わっているかもしれない。