ももたろ4

 さてさて、すくすくと育ったももたろ、実に不思議な子どもでして、世話を始めてすぐにしゃべり始め、十日で立ち、廿日で歩けるようになりました。おじいさんおばあさん、驚きの連続です。ご飯もたんと食べ、茶碗一杯で一杯分だけ成長し、あっというまに十歳位のいでたち。あまりによく食べるものですから、ちょっぴり太ってきました。老夫婦はちょっぴり心配。でもつい、「ほれほれももたろ、たんと食え」ご飯をたくさんよそってしまいます。我が子が育つのは、やはりうれしいのでした。


 そんな平和で平凡な毎日を送っていたある朝のこと。「どぉーん、どぉーん!」村中に轟音が響きわたります。「なんじゃなんじゃ!?」3人は土間の片隅にかたまって、ぶるぶる。天変地異が起こったのでしょうか。「どぉーん!どぉーん!!」轟音とともに村人たちの悲鳴も聞こえます。騒ぎはしばらく続きました。


 轟音は天変地異ではありませんでした。鬼が島の鬼が来たのです。幸い、3人の家は村の外れの奥まった場所にあったので被害はありませんでしたが、村のほとんどの家は荒らされていました。鬼は暴れ、食糧はすべて持っていかれました。これでは食べ物がなく、村人たちは生活できません。死人こそ出ぬものの、転んでひざ小僧をすりむいた人は5人、たんこぶができた人は8人も出たのです。なんという悲劇。おじいさんおばあさんも悲しんでいます。ももたろも悲しい。もうご飯をたんと食べることができません。
 ももたろは、決心しました。鬼が島へ行って鬼と戦おう。とられた食糧を取り戻そう。この村に平和を…
「おじいさん、おばあさん」「なんだね、急に」
ももたろはすっくと立ち上がり。



「ぼく、鬼退治に行くよ!」


つづく