ももたろ5

 ふたりは目が点。だってももたろは、体が大きいとはいえ、この前まで幼児だったのですから。食べてばかりで、勇ましい素振りなんて一度も見せたことがなかったのですから。
「突然何を言い出すのじゃ」「ももたろ、止めなさい」
 ふたりは必死で止めにかかりますが、ももたろの決意の固いこと。「行く」と言い張り聞きません。そのうちにおじいさんもおばあさんも諦めてきました。「この子は桃から生まれた不思議な子じゃ。何か、不思議な力があるかもしれん。あんた、行かせてみましょうか」「うーむ、そうじゃなあ。心配じゃが…、行かせてみるかのう」……


 翌朝、ももたろは旅立ちました。おばあさんの作った「日本一のきび団子」と、おじいさんの作った「『日本一』と書かれた旗」を持って。日本一が好きですね。「おじいさん、おばあさん、行ってきます!」「気をつけてのう…」心配で仕方がない老夫婦。ももたろの背中が見えなくなるまで、いつまでもいつまでも手を振ったのでした。
 ももたろが見えなくなって、ふたりきりになったおじいさんとおばあさん。あれ、そういえば、ふたりきりになるのなんて何時ぶりでしょう…ふたりは顔を見合わせ…
 ももたろの旅立ちは、おじいさんとおばあさんに忘れかけていたラブラブをもたらしたのでした。


つづく