ももたろ2

 目が覚めるとおじいさんの顔がありました。「おお、気がついたかね」とおじいさん、ひと安心。おばあさんは目をパチパチして、そしてハッとして飛び起きました。「そうじゃ!桃!大きな桃じゃ!」よっぽど桃を気に入ったのでしょう。桃にしがみついたまま溺れかけたところを、たまたま通りかかった夫が助けてくれた……なんてこと、おばあさんは全然気にしていない様子。まあ、そんなふうに天真爛漫なところを、おじいさんは好きだったりするのですが。

 「おやおや、このばあさんは溺れても元気じゃのう。桃ならちゃんと持って帰って来ましたよ、あんたがあんまり大事そうに抱えとったから」
 そう、流されている妻を発見したおじいさんは着物をさっと脱いで川を泳ぎ、妻を桃ごと抱えあげると、水を吐かせるなど適切な処置をほどこし、服を着て、おばあさんをおんぶ、桃をだっこして帰ってきたのです。なんて男前なおじいさんでしょう。

「おお、ほんとじゃほんとじゃ、桃がちゃんとあるわい。うふふ、あんた、ありがとう」と、おばあさんはにっこり笑って見せたりして。おじいさんはちょっと顔を赤らめて。こんなふうに、ふたりはずっとラブラブしてきたのです。


 そんな話は置いておいて。ふたりは桃を割って食べてみることにしました。しかし、なにしろ桃がとんでもなく大きい。包丁を入れるのもなかなか躊躇われます。

 「よし、それじゃあ割りますよ」とおばあさん。おじいさんの顔と桃を交互に見つつ、包丁を……

「っあああ!やっぱり緊張してしまう。だめだのう」
「なんだね、そんなところばかり女々しい。よいよい、わしが割る」とおじいさん。おばあさんと桃を交互に見つつ、包丁を桃にそっと当てると……
「!?!?おおお、なんじゃこれは!?」
なんと、桃がももももっと動くではありませんか!
「ば、ばあさん、桃が……」「じ、じいさん!桃が動いとる!」
ふたりはぴったりくっつきながらももももっと後退り。一方桃は動きながら、ぶよぶよ膨らんでいきます。ぶよぶよ、ぶよぶよ、ぶよぶよ……


つづく